事業譲渡と株式譲渡の違いとメリット・デメリットを一覧表で比較

コラム 2023/6/27

事業譲渡と株式譲渡の違いとメリット・デメリットを一覧表で比較

事業譲渡と株式譲渡の違いとメリット・デメリットを一覧表で比較

事業譲渡をご検討の方は「事業譲渡」と「株式譲渡」の違いはご存知でしょうか。

当記事では、事業譲渡と株式譲渡の違いを一覧表で解説し、それぞれのメリット・デメリットについても解説します。

なお、事業譲渡の基本は「事業譲渡とは?譲渡の際の注意点についてわかりやすく解説」をご覧ください。

事業譲渡と株式譲渡の違いを一覧表で解説

事業譲渡と株式譲渡には「譲渡する対象」、「譲渡取引を行う主体」、「締結する契約」、「譲渡取引の目的」という4つの違いがあります。

【事業譲渡と株式譲渡の違い】

比較項目 事業譲渡 株式譲渡
譲渡する対象 譲渡会社の事業の全部または一部(事業資産、契約によっては債務を含むケースもある) 株式
譲渡取引を行う主体 事業を有する法人 経営者個人または法人
締結する契約 事業譲渡契約 株式譲渡契約
譲渡取引の目的 譲渡側:債務を含めた事業整理し、経営の効率化を図る。

譲受側:譲渡会社の事業の全部または一部を取得する。

譲渡側:株式を手放し、資金を得る。または事業の一部を譲渡することなく、資金を調達する。

譲受側:株式の過半数を保有し、対象の会社の経営権を得る。または株式を保有して株主総会での議決権を得る。

まず、事業譲渡と株式譲渡では、譲渡する対象が違います。

事業譲渡では譲渡会社(事業を譲り渡す会社)の事業の全部または一部を譲渡しますが、株式譲渡では株式を譲渡します。

なお、事業譲渡で事業資産だけでなく、契約によっては譲渡する事業に関係する借金や売掛金などの債務を、譲受会社(事業を譲り受ける会社)が引き継ぐことがあります。

事業譲渡の際の債務の取り扱いについては「事業譲渡の際に債務はどうなる?契約前に押さえたいポイントを解説」をご覧ください。

また、事業譲渡はあくまで「事業を有する法人」だけが取引の主体になりますが、株式譲渡は法人だけでなく、経営者個人が株主になり得ます。

締結する契約も、事業譲渡では事業譲渡契約、株式譲渡では株式譲渡契約と違います。

譲渡取引の主な目的は、事業譲渡と株式譲渡で似ていますが、事業譲渡では譲受側が事業の取得を確実に行える取引である一方で、株式譲渡は必ずしも譲受側が経営権を得られるものではないという点で違います。

事業譲渡と株式譲渡のメリット・デメリットを比較

事業譲渡と株式譲渡には、それぞれにメリットとデメリットがあります。
それぞれ、譲渡側と譲受側の視点でまとめると、次のとおりです。

【譲渡側のメリット・デメリット比較表】

比較項目 事業譲渡 株式譲渡
譲渡側のメリット
  • 事業譲渡の対価を得られる
  • 選択と集中で事業を整理し、経営の効率化を図れる
  • 株式譲渡の対価を得られる
  • 過半数に達しない株式譲渡の場合、経営権を譲渡することなく、資金調達できる
譲渡側のデメリット
  • 事業譲渡に伴う手続きが煩雑で時間かかる
  • 事業譲渡側の従業員や取引先など関係者から反発される可能性がある
  • 株式譲渡に伴う手続きが煩雑で時間かかる
  • 株主の反発・取引先の離反などのトラブルが生じるリスクがある

事業譲渡も株式譲渡も、譲渡側であればどちらも「対価を得られる」メリットが共通しています。

経営の効率化をはじめ、事業承継を行った上で事業撤退や廃業が確実に行えるのは事業譲渡です。

株主譲渡でも過半数の株式を譲渡した場合、法人であれば事業の撤退、経営者個人であれば事業承継を行った上で会社経営から退くことができますが、事業譲渡ほど確実ではありません。

一方、譲渡側の事業譲渡と株式譲渡のデメリットも「手続きが煩雑」という点が共通しています。

事業譲渡の過程では従業員の労働条件に関する協議が必要で、譲受会社の人事制度や福利厚生の影響を受けるリスクがあります。

株式譲渡取引の過程では、取引の際、譲受企業の経営方針に影響を受ける可能性があります。

【譲受側のメリット・デメリット比較表】

比較項目 事業譲渡 株式譲渡
譲受側のメリット
  • 事業を立ち上げるより短期間で事業拡大できる
  • 譲渡した事業のブランドイメージを継続活用できる
  • 過半数に達しない株式譲渡の場合、経営権はそのまま譲渡側が保持するが、経営陣への発言力を高められる
譲受側のデメリット
  • 譲渡に伴う手続きが煩雑で時間かかるうえ、事業の取得費用がかかる
  • 株式の取得費用が高額になる可能性がある
  • 株主の反発・取引先の離反などのトラブルが生じるリスクがある

譲受側の事業譲渡の最大のメリットは、譲渡対象の事業資産や負債、顧客基盤、ノウハウ、従業員などを引き継ぎ、短期間で事業拡大できることです。

他にも、事業譲渡に関する費用(のれん相当額)について税制上の優遇される場合があります。

株式譲渡の場合はエンジェル税制など、条件を満たした場合に税制上の優遇措置を受けられる場合があります。

過半数の株式を譲渡するなど経営権を取得する株式譲渡の場合、譲受側の望む経営方針をもとに、会社経営できるようになる点もメリットです。

譲受側の事業譲渡の最大のデメリットは「手続きが煩雑で取得費用がかかる」点です。

また、譲渡された事業の負債を引き継ぐリスクがあるだけでなく、事業統合の過程で、譲受側の従業員の離職など、社風が変わるリスクもあります。

譲受側の株式譲渡のデメリットは、株主の反発や取引先の離反などのトラブルが生じるリスクです。

経営権を取得する株式譲渡の場合、株式譲渡した対象の会社の従業員のモチベーションが下がるリスクもあります。

なお、事業譲渡を行う際の手続きの流れなどは「事業譲渡の手続きとは?必要な費用も解説」をご覧ください。

また、事業譲渡の際の従業員と協議すべきことについては「事業譲渡で従業員はどうなる?通知と処遇の選択肢を解説」をご覧ください。