ノウハウ 2023/5/30
事業譲渡の金額はどう決まる?算出方法と留意点を解説
事業譲渡を考えている売り手や買い手の方は、企業価値とも言える事業の売買金額がどのように算出されるか、気になりますよね。
当記事では、事業譲渡の金額がどう決まるのか、算出方法や留意点、0円価格の無償譲渡のケース、1円での事業譲渡のケース、事業譲渡の金額にかかるについても解説します。
CONTENTS
事業譲渡の金額を算出する方法
事業譲渡の際、企業価値にあたる売買金額を算出する方法にはいくつか種類があります。
どれか一つを選ぶ、あるいは複数の方法を合わせるとしても、売り手と買い手の双方が納得できるよう、税金や会計処理に負担のない評価方法と金額になるように進めていく必要があります。
【事業譲渡の売買金額を算定する方法】
算定方法 |
概要 |
時価純資産法 | 企業の純資産(資産から負債を差し引いた金額)の時価を基準に企業価値を算定する方法。
事業譲渡の金額とする場合、資産の時価と負債の時価をそれぞれ評価し、その差額を事業譲渡の売買金額とする。 なお、企業の資産や負債の時価を評価しにくいケースや、企業の将来性を重視するケースには向かない。 |
収益還元法 | 会社の過去の収益を元に、将来的に事業が生むだろう収益(事業の収益性)を求め、企業価値を算定する方法。
将来の収益を予想する手法は2種類ある。
なお、事業の将来性を正確に予測するのは難しく、特に根拠が乏しい場合の数値は参考程度となる。 |
類似会社比較法 | 類似の事業譲渡事例を参考に、企業価値を算出する方法。
類似の上場企業を探し、その株価を時価純資産で割り、さらに対象事業の時価純資産をかけて求める。 事業譲渡の売買金額を概算的に把握したいケースで有効だが、類似と言えるほどの上場企業の事例を探し出すのは難しいため、参考程度に留まるのが一般的。 |
なお、事業譲渡の基本は「事業譲渡とは?譲渡の際の注意点についてわかりやすく解説」を、事業譲渡を行う際の手続きの流れなどは「事業譲渡の手続きとは?必要な費用も解説」をご覧ください。
事業譲渡の金額を決める際は利益相反を防ぐべき
事業譲渡における利益相反とは、事業譲渡において、売り手と買い手の間に、一方の立場では利益になるものの、他の立場では不利益になる状態を指します。
例えば、売り手が買い手と個人的に親しい場合、懇意にしている買い手に有利な条件で売り手が事業譲渡を進めてしまう可能性が考えられます。
一方で、買い手に有利な事業譲渡を行なってしまうと、売り手や売り手の株主は不利益を被る可能性があります。
事業譲渡での利益相反を防ぐには、第三者の専門家や専門機関に相談のうえ、事業譲渡の条件を書面で明確に取り決める必要があります。
事業譲渡の対価は現金以外でも支払える
事業譲渡の対価は、例えば、株式や新株予約権、商品・サービス、債務免除など、現金以外でも支払えます。
ただし、対価の支払い方法によっては税金や会計処理に影響する可能性があるため、顧問税理士や税務の専門家に相談して決定することが大切です。
価格0円で事業の無償譲渡はできるのか?
事業譲渡の際、価格0円で事業を譲渡することができます。
価格0円での事業譲渡は「無償譲渡」と呼ばれ、事業の売り手と買い手で合意の上、対価を支払わずに事業を譲り渡すことを指しますが、次の点を考慮した上で慎重に判断する必要があります。
まず、事業の無償譲渡は売買にはあたらないため、法人税の課税対象にはなりませんが、相続税で定められる「贈与」にあたり、条件によっては贈与税の課税対象となります。
参照:相続税法|e-Gov
無償譲渡をする際はさまざまな事情が考えられるものの「その事業に対価を支払うほどの価値がない」という意味に受け取られる可能性があるため、従業員の士気を下げ、離職を招く可能性があり、結果として業績悪化など、事業継続が危ぶまれる可能性があります。
価格0円と1円の事業譲渡の違い
「価格0円での事業譲渡」と「価格1円での事業譲渡」は、たった1円の違いではありますが、法律上の扱いが変わるため「対象となる税金」が変わります。
事業を0円で無償譲渡する際、条件によっては、譲渡した事業の評価額に対して贈与税がかかります。
一方、1円でも対価を支払って事業譲渡を行うケースでは、債務などで譲渡する事業の評価額が1円以下である場合、原則、贈与税の対象にはならず、法人税の対象となります。
ただし、譲渡する事業の評価額が1円よりも高い場合は、評価額から1円を引いた差額に対して贈与税が課される可能性があります。
事業譲渡の金額にかかる税金と対策
事業譲渡の売買金額に対する税金は、売り手と買い手の両方に課されます。
- 売り手にかかる税金:法人税、消費税、所得税、住民税など
- 買い手にかかる税金:消費税、不動産取得税、登録免許税など
事業譲渡の際にかかる税金の節税対策には、福利厚生費のかかる退職金制度を活用するなど、事業利益を相対的に小さくする手段が有効です。
具体的には、事業譲渡する際、売り手側の執行役員や従業員が退職することが考えられるため、税制上優遇のある退職金を支払うことにより、節税効果が見込めます。
参照:No.2725 退職所得となるもの|国税庁
また、既存の株主が保有する株式数を増やさずに、第三者(新株主)に対して新たに株式を発行する「第三者割当増資」を、事業譲渡の際に行うと、新株の発行で得た資金を事業譲渡の対価に充て、法人税の節税効果が見込めます。
事業承継税制を活用しよう
事業譲渡が、個人事業や中小企業における事業承継に関するものであるのなら、事業承継税制も活用し、節税しましょう。
事業承継税制とは、後継者が中小企業の株式を相続や生前贈与で引き継いだときに、本来支払うべき多額の相続税や贈与税の納税を猶予する制度です。
一定期間にわたって免除要件を満たした場合に限り、猶予された税金は、免除されます。
事業承継税制を利用するには、まず承継計画の認定申請を行い、相続税又は贈与税の申告と、納税猶予の承認を受ける必要があります。
参照:事業承継税制特集|国税庁
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