コラム 2023/12/21
事業承継にかかる費用の種類や課税対象を解説
「事業承継」を検討しており、その際にかかる費用に関して知りたい人もいるのではないでしょうか?
当記事では「事業承継」を行う際にかかる費用の種類に関して解説します。
事業承継を行った場合の課税対象に関してもそれぞれ説明するので、ぜひ参考にしてください。
事業承継にかかるおもな費用は税金と相談料
事業承継にかかるおもな費用は税金と専門家に支払う相談料です。事業承継は誰に事業を引き継ぐかによって3種類に分類され、その種類によってかかる費用も異なります。
【事業承継によってかかる費用の例】
事業承継の種類 | かかる費用 |
親族内事業承継 |
|
企業内承継
(親族外承継) |
|
第三者承継
(M&A) |
|
たとえば、事業承継によって、会社の資産や株式などを後継者に引き継ぐ際に発生する「相続税」「贈与税」があります。「相続税」「贈与税」の算出を税理士や会計士に依頼する場合には「依頼料」がかかる場合があります。
また、第三者承継としてM&Aを行う場合、譲受企業の選定や交渉などが必要となるため、コンサルティングや弁護士など専門的な知識を有する専門家に相談するのが一般的です。M&Aの相談先によってかかる費用は異なりますが、相談料・着手金・中間金・成功報酬などの「手数料」が発生します。
なお、事業承継にかかる費用は引継ぎ先や事業の規模、当事者間の関係性などによっても異なります。事業承継の引き継ぎ先による違いを確認したい人は「事業承継とは?定義や種類などわかりやすく解説」を確認してください。
事業承継を行った場合の課税対象
事業承継を行った場合に対象となる税金の種類は、事業承継の種類や引継ぎ内容によって異なります。
【事業承継を行った場合に発生する税金の例】
税金の種類 | 課税対象 | 税率 |
相続税 | 亡くなった人から引き継ぐ資産 | 累進課税 |
贈与税 | 資産の贈与 | 累進課税 |
法人税 | 法人の計上利益
※事業承継によって売却益を得た場合 |
(中小法人の場合) |
消費税 | 商品やサービスの消費
※事業承継のスキームによる |
|
登録免許税 | 会社や不動産の登記変更にかかる費用 |
※事業承継税制が適用された場合 |
不動産取得税 | 取得した不動産
(固定資産評価額)
|
※事業承継税制が適用された場合 |
相続税
相続税は、株式などの資産を相続したときに相続人に対して課せられる税金です。事業承継では、会社の資産を相続する後継者が相続税を支払うことになります。
相続税には、課税対象の金額高くなるほど税率が高くなる「累進課税制度」が適用されています。そのため、相続税の税率は相続額が多くなるほど高くなります。
【相続税の速算表】
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | – |
1,000万円以上
3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円以上
5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円以上
1億円以下 |
30% | 700万円 |
1億円以上
2億円以下 |
40% | 1,700万円 |
2億円以上
3億円以下 |
45% | 2,700万円 |
3億円以上
6億円以下 |
50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
参照:No.4155 相続税の税率|国税庁
たとえば、経営者が死亡し、親族が会社の後継者となる場合に後継者は相続税を支払う必要があります。また、亡くなった経営者の財産を親族が受け継ぐ場合にも相続税が発生します。
なお、相続税の納付は現金のみとなります。後継者が相続税を支払えるほどの現金を持っていない場合、融資を受けて納税しなくてならないため、事業承継を検討している現経営者は対策を検討するようにしましょう。
贈与税
贈与税は、生前に資産を譲渡した場合に受け取った側に課せられる税金です。贈与税は、事業承継で会社の資産を相続する後継者に対して課せられます。
贈与税の課税対象となるのは2,500万円以上の資産贈与です。贈与税も累進課税制度が適用されており、贈与される額が多くなるほど税率が高くなります。
なお、事業承継税制における贈与者・受贈者の対象者が拡充され、親族外の後継者も贈与税が猶予されるようになりました。事業承継税制は、事業承継において後継者が支払うべき相続税や贈与税の納税に関して猶予する制度です。事業承継税制の対象者が拡充されたことで、後継者が納税の負担による承継の断念を選択するケースを回避できる可能性が高まるといえるでしょう。
法人税
法人税は、法人が得た利益に対して課せられる税金です。親族内承継や企業内承継では法人税が課税されることはありませんが、M&Aによる事業承継において法人税が課せられる場合があります。
法人税の税率は、中小企業の場合は800万円以下の利益に対して15%、800万円以上の利益に対しては23.2%です。M&Aによる事業承継において、事業譲渡を行った場合には、譲渡価額と譲渡対象となる資産や負債との差額に対する法人税が課せられます。
事業譲渡によって法人が売却益を得る場合には法人税がかかります。株式譲渡に限らず、事業の一部もしくは全部を売却して場合、譲渡金額が譲渡する事業の資産と負債の差額よりも大きい場合は、法人税の対象となります。
消費税
消費税は、商品やサービスの消費に対して課せられる税金です。株式は非課税扱いなので、事業承継を行う場合の株式譲渡に消費税はかかりません。
ただし、株式譲渡によるM&Aを行った場合、オーナー経営者は個人として譲渡所得に対して、20.315%の税金(所得税および復興特別所得税15.315%、住民税5%)を納める必要があります。
なお、M&Aによる事業承継を行った場合は譲受企業に課税される場合があります。その場合、M&Aで得た資産を課税対象と非課税対象に分けて、消費税の対象となる資産に対して消費税が課せられます。
参照:株式・配当・利子と税|国税庁
登録免許税
登録免許税は、不動産を登記する際に課せられる税金です。事業承継によって土地や建物を得た場合に課せられます。
登録免許税の税率は、登記の種類によって異なります。登録免許税の税額は、土地や建物の固定資産税評価額に税率を掛けた額になります。
なお、登録免許税は、後継者が取得した一定の資産に対する納税が猶予される「事業承継税制」の対象となっています。事業承継税制要件を満たした場合、合併の登記は税率が0.2%に、会社分割の登記は税率が0.4%に減税されます。
不動産取得税
不動産取得税は、不動産登記の有無にかかわらず土地や建物を取得したときに課せられる税金です。不動産取得税の税率は土地・住宅は3%、非住宅は4%です。
事業承継によって不動産を取得した後継者は、不動産の価格である「課税標準額」に税率を掛けた額の不動産取得税を納付する必要があります。
なお、相続した不動産には不動産取得税がかかりませんが、贈与による不動産の取得には不動産取得税がかかります。
事業承継の費用に対する支援制度
納税猶予や補助金制度など、事業承継の費用に対するさまざまな支援制度があります。
【事業承継の費用に対する支援制度の例】
制度名 | 概要・問い合わせ先 |
事業承継税制 | <概要>
・贈与税や相続税の納税を猶予する制度 <問い合わせ先> 事業承継税制特集|国税庁 財務サポート「事業承継」|中小企業庁: |
事業承継・引継ぎ補助金 | <概要>
・事業承継を契機とした新しい取り組みや事業再編、事業統合に伴う経営資源の引継ぎを行う中小企業等を支援する制度 <問い合わせ先> |
事業承継・集約・活性化支援資金 | <概要>
・事業および株式の譲渡、合併などにより企業を承継・集約化する中小企業者の資金調達の円滑化を支援する制度 <問い合わせ先> 事業承継・集約・活性化支援資金|日本政策金融公庫 |
企業再建資金 | <概要>
・企業の再建を図る人を支援する制度 <問い合わせ先> 企業再建資金|日本政策金融公庫 |
事業再生・企業再建支援資金 | <概要>
・経営改善、経営再建などに取り組む必要が生じている中小企業の自助努力による企業再建を支援する制度 <問い合わせ先> 事業再生・企業再建支援資金(企業再建・経営改善支援関連)|日本政策金融公庫 |
たとえば「事業承継税制」によって、非上場株式の承継で発生する贈与税や相続税が2028年まで猶予されます。事業承継税制は、事業承継を行う際の納税による後継者への負担が軽減することを目的としており、中小企業における経営者の高齢化と後継者不足を救済するための支援策です。
また、事業承継を行う際に必要な資金を賄える融資制度が複数あります。いずれの融資制度も、企業の再建を目的とした事業承継を行いたい中小企業が、資金難を理由に廃業を選択することがないよう設定されています。
なお、これらの支援制度を受けるためには、厳しい要件が設けられているものもあります。支援制度の要件は年度によっても異なるため、活用を検討する場合は、該当の支援に関するホームページを確認するようにしましょう。
まとめ
事業承継にかかるおもな費用は、税金と相談料です。事業承継の種類や引継ぎ内容によってかかる税金の種類も異なります。
たとえば、事業承継によって会社の資産や株式などを後継者に引き継いだ場合「相続税」「贈与税」がかかります。「相続税」「贈与税」の算出を税理士や会計士に依頼する場合には依頼料がかかる場合もあります。
また、M&Aによる事業承継は、譲渡企業の選定や交渉を行う必要があるため、専門の知識を有する専門家に相談するのが一般的です。M&Aの相談先によってかかる費用は異なりますが、相談料・着手金・中間金・成功報酬などの「手数料」が発生します。
なお、事業承継の費用に対するさまざまな支援制度があります。支援制度には厳しい要件が設けられているものもあるため、活用を検討する場合は、該当の支援に関するホームページを確認するようにしましょう。
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