ノウハウ 2022/11/16

廃業にかかる費用はどのくらい?相場と費用を抑える方法を解説

廃業を考えている人の中には、廃業にどのくらい費用がかかるか分からないため、なかなか踏み出しづらい、廃業費用が想定よりも高額になり廃業に踏み切れないという人もいるのではないでしょうか。

当記事では廃業にどのくらいの費用がかかるのか解説します。廃業費用を抑える方法や廃業費用を調達する方法についても詳しく説明していくのでぜひ参考にしてみてください。

事業形態によって廃業にかかる費用は違う

株式会社や有限会社、個人事業主といった事業形態によって廃業にかかる費用は違います。事業形態によって廃業時の状況や条件が違うためです。

事業形態ごとの廃業に係るおおよその費用を詳しく説明するので、廃業を考えている人は当てはまる事業形態の費用を参考にしてみてください。

株式会社を廃業する際にかかる費用

株式会社が廃業する際に必要な費用は士業に依頼する場合や事業規模によって異なります。

とくに、事業運営で使用していた設備や機械が買い取り品目に当てはまらなかった場合や事業規模が大きい場合は1000万円を上回るケースもあります。株式会社の廃業を検討している人は、廃業にかかる費用の内訳と目安をおさえておきましょう。

【廃業にかかる費用の内訳

内訳 費用の目安
解散・清算人・生産結了など各種登記 解散の登記:3万円

清算人の登記:9,000円

清算結了の登記:2,000円

官報公告 3万円強~4万円弱
商業・法人登記情報や登記事項証明書とその郵送代 商業・法人登記情報の取得(1通):334円

登記事項証明書の取得:(2通):960円~1,200円

郵送代:数千円

在庫の売り切り 処分業者への依頼の費用によって異なる
設備などの処分費用 トラック1台分で数万円~の料金
物件の原状回復費用 坪あたり数万円~10万円
従業員の退職金 事業規模や勤続年数によって異なる。

中小企業で5年勤続の場合は72万円程度

勤続10年の場合は171万円程度

廃業後の確定申告では在庫の量に応じて税負担が大きくなるため、在庫をまとめて処分する必要があります。 自社ですべての在庫を処分できない場合は処分業者へ依頼する必要があるため、この処分業者への依頼料が発生します。

処分業者への依頼料は業者や依頼する際の出張料によって異なるため、どのくらい費用がかかるのか事前に見積りましょう。

事業で使用していた設備や機械があれば廃業の際処分する必要があります。引き取り手が見つかれば買い取ってもらえますが、古い設備や企業機密を含む設備を処分する際は業者に処分してもらう必要があります。

事業を行うため賃貸借物件を使用していた場合には、退去時に物件の内装を借りたときの状態に戻して退去する必要があります。物件オーナーとの交渉により原状回復の範囲を縮小したり、相場見積もりを取り価格交渉をしたりして物件の原状回復費用を抑えられるようにしましょう。

廃業する際にはこれまで勤めてきた従業員へ退職金を払う必要があります。

事業規模や勤続年数、従業員数によって退職金は違ってきますが、政府統計ポータルサイトにある「中小企業で勤続5年の場合は一人当たり72万円程度、勤続10年の場合は一人当たり171万円程度かかるというデータが出ています。廃業を検討している人は従業員に支払う退職金がいくらになるか見積もりをしておくとよいでしょう。

個人事業主を廃業する際にかかる費用

個人事業主の場合廃業の手続きにかかる費用は0円で済みます。

個人事業主は登記が必要なく、解散・清算人・生産結了など各種登記や官報公告、商業・法人登記情報や登記事項証明書とその郵送代がないためです。

ただし、事業を行うにあたって設備を用意していた場合や従業員を雇っていた場合、事務所を借りていた場合は、株式会社や有限会社と同じように、設備などの処分費用や物件の原状復帰費用、従業員の退職金が必要です。そのため、個人事業主を廃業したい人は、廃業費用をリストアップして把握しておきましょう。

廃業した翌年に確定申告が必要になる

廃業した人は、廃業した翌年に確定申告を行いましょう。

確定申告を忘れてしまったり、行わなかったりした場合は無申告加算税が課される場合があるため、廃業した場合は必ず確定申告を行うようにしてください。

個人事業主が確定申告を提出するスケジュールは、廃業した年の翌年2月16日から3月15日です。法人の場合には、清算登記のタイミングと合わせて確定申告を行うことになります。確定申告のタイミングがわからない人は、管轄の税務署に問い合わせて確認してみましょう。

個人事業主は廃業時にかかった費用を必要経費に算入できる

個人事業主の場合は廃業後の確定申告については節税が可能です。以下では節税のポイントを4つ紹介します。

廃業時にかかった必要経費の特例

廃業時の確定申告では設備などの処分費用や物件の原状回復費用といった廃業後に生じた費用を計上できる特例があります。

特例利用には条件があります。

【特例の対象】

  • 製造業や卸売業等による事業所得を得ていた
  • 不動産所得または山林所得を得ていた

【計上できる費用】

  • 廃業しなかった場合に必要経費として計上できた費用である
  • 不動産所得や事業所得、不動産所得の事業に関する必要経費である

これらの対象者であれば特例を利用できるので、ぜひ活用してみてください。

法人成りする場合の一括償却資産の経費算入

法人成り(個人事業から法人に変更)を行う際、それまで使用していた一括償却資産を法人に引き継ぐ場合は、一括償却資産の取得価格のうち必要経費に算入していない部分のすべてを、廃業年度の事業所得の必要経費に算入することができます。

法人成りによる使用人の退職金相当額の経費算入

法人成り(個人事業から法人に変更)を行う際、引き続き勤務する従業員の退職金相当額を法人に支払う場合に、個人事業の必要経費に算入することができます。

繰延消費税額等の経費算入

廃業した際、必要経費に算入されていない繰延消費税額等は、廃業年分の事業所得の必要経費に算入することができます。

廃業にかかる費用を抑える方法

会社を廃業するためには大中小規模の会社の限らず、多くの費用が掛かってしまうことが多いです。

【廃業にかかる費用を抑える方法】

  • 司法書士や税理士への依頼費用を削減する
  • 時にできるだけ債務が残らないようにする

廃業費用を抑える方法を紹介するので費用を削減する方法を確認しておきましょう。

司法書士や税理士への依頼費用を削減する

登記の専門家である司法書士や貸借対照表の作成など、解散の手続きに必要な書類を準備してくれる税理士など、廃業に必要な書類や手続きを代行してもらえる便利な専門家に依頼するのも一つの手です。

しかし、廃業の登記を司法書士に依頼すると10万円前後、解散の手続きに必要な書類を準備してくれる税理士は20万円程度などとても高額な費用となっています。

廃業に関する登記の知識がある人は自分ですべての書類作成や手続きをすることで、廃業手続きにかかる費用を抑えるようにしましょう。

精算時にできるだけ債務が残らないようにする

債務超過がある場合は清算費用が大きくなる可能性があるため、会社清算時はできるだけ債務が残らないようにしましょう。全ての負債が超過できない場合、経営者や役員が資産や現金を持ち寄って負債の返済に充てなければならず、負債が多いほど会社の清算にかかる費用が膨らんでいくためです。

廃業にかかる費用を抑えたい人は経費を減らすなどして精算時にできるだけ負債が残らないようにしましょう。

廃業費用を調達する方法

廃業にあたり、士業に頼らず自分で書類や手続きをしたり、費用を経費に算入したりと様々な面で費用を浮かせようとしてもお金が足りないという場面があると思います。

【廃業費用を調達する方法】

  • 不動産売却前提ローンを利用する
  • 小規模企業共済を利用する

廃業費用を調達する方法を紹介するので廃業費用が足りないという人はおさえておきましょう。

廃業支援バイアウトを実行する

廃業支援バイアウトとは新生銀行が商標登録している新たな事業継承の方法です。会社の株式を買い取り、円滑な転業または廃業および事業譲渡等による一部事業の承継のお手伝いをする方法となっております。

事業承継しようにも後継者がいない、適切な債務整理ができない、事業をたたむお金がないという方には、廃業手続きの手間を省ける、売却益を獲得できる、会社を存続できる場合もあるというメリットがあるため、ぜひ一度活用を検討してみてください。

【新生銀行公式サイト|廃業をご検討なら、弊行にお任せください! 新生銀行

不動産売却前提ローンを利用する

所有する売却予定の不動産を担保に資金調達し、不動産の売却代金で返済をするローンです。

メリットとしては以下が挙げられます。

  • 低金利で借りられる
  • 総量規制(年収の3分の1を超える借り入れを規制)の対象外
  • 毎月の支払いはローンの利息のみ
  • 買い手がつく前に資金調達ができるため、返済の負担が少ない
  • 担保となる不動産価値によっては高額利子が可能

不動産を所有している方はぜひ活用してみてください。

小規模企業共済を利用する

小規模企業共済は国の機関である中小機構が運営する、小規模企業や個人事業主を対象とした積み立てによる退職金制度です。加入者が毎月1,000円から7万円までの範囲内から任意で決めた掛け金を中小機構に納めることによって、退職や事業を廃業した際に、退職金や年金として受け取ることができます。

掛金は加入後も増減可能で、その全額が所得控除できる、共済金の受取は一括・分割の両方から選択できる、低金利の貸付制度を利用できるといったメリットがあります。

受取方法によっては税法上の扱いが違うことに注意しましょう。

詳しくは小規模企業共済の公式サイト(小規模企業共済|小規模企業共済(中小機構))を確認して活用してみてください。

会社を廃業する前に検討すること

一度廃業するとこれまで培ってきた技術やノウハウ、顧客情報や販売ルート、事業を行うことで得てきた収入などを失ってしまいます。そのため、会社を廃業する際は本当に廃業して問題がないかを事前に検討しておきましょう。

【会社を廃業する前に検討すること】

  • 休眠会社にする

廃業という選択をする前に、廃業の代替手段も紹介するので、廃業を検討している人は参考にしてみてください。

再建型倒産手続きやM&Aを利用する

廃業ではなく再建型倒産手続きやM&Aという方法をとることで、会社の立て直しを図る選択もあります。

【立て直しの選択肢と概要】

立て直しの選択肢 概要
再建型倒産手続き 債務者の借入金の返済期間を延長してもらったり、債務カットをしてもらったりしながら収益・財産を維持または向上させ、債務者の経済的な再建を図っていく手続きのこと。

再建型手続きとしては、民事再生法に基づく民事再生手続き、会社更生法に基づく会社更生手続き、私的整理手続きがある

M&A 「Mergers(合併)&Acquisitions(買収)」の略で、2つ以上の会社が1つになったり、企業が他の企業を買ったりすること。

主な手法としては株式譲渡、事業譲渡、合併、会社分割がある

再建型倒産手続きやM&Aを活用することで事業を続けたり、ほかの誰かに事業を継承したりできます。このような選択肢を選んだ場合培ってきた技術や販売ルートといった資産を失うことなく事業を続けられる可能性もあるため、廃業を検討している人は立て直しも検討してみましょう。

休眠会社にする

会社を廃業するのではなく、一度休眠会社にし、再び事業ができる状態になったら会社を再開する方法があります。

休眠会社とは最後に登記を行ってから12年が経過するか、税務署や市町村役場に届出を提出することで長期間企業活動をしていない会社になることです。

事故や病気、資金繰りなどの問題で廃業せざるを得ない状況でも、少し待てば資金繰りができたり、顧客が待ってくれたりする可能性がある場合は、会社の休眠を検討してみましょう。

まとめ

廃業にかかる費用は事業形態や事業規模、士業の方に依頼するかによって異なってきます。

廃業費用を抑えたい人は、士業の人に依頼せずに自分で書類作成や手続きを完了させる、精算時にできるだけ債務が残らないようにするといった工夫をしましょう。

会社の廃業を検討している人は、廃業の前に再建型倒産手続きやM&A検討するのも選択肢のひとつです。これらの方法によって会社の立て直しを図ったり、休眠会社にしたりすることで、再び事業ができる状態になるまで待つといった方法をとるのもよいでしょう。