ノウハウ 2022/11/30

法人の廃業とは?手続きの流れを解説

法人の廃業を検討している人のなかには、どんな手続きを行えばいいのか分からない人もいますよね。また、概要は知っていても書類作成の期限やその提出先といった詳細な内容を知らない人もいるでしょう。

当記事では、法人の廃業手続きについて解説していきます。廃業の手続きにかかる費用も説明しているため、法人の廃業を検討している人はぜひ参考にしてみてください。

法人の廃業とは事業を終了させること

法人の廃業とは、経営者が事業を終了させることを意味します。内閣府が令和3年3月に報告した「日本経済2020-2021」の「第3章 ポストコロナに向けた企業活動の活性化と課題(第2節)」によると、経営者の高齢化や後継者不足が近年の主な廃業要因として挙げられます。

このように、経営者の自主的な判断で廃業を決定した法人は、廃業のための手続きをする必要があるため、廃業を決めた人は廃業手続きの準備をすすめていきましょう。

法人が廃業手続きをする際の流れ

廃業を検討している人は、法人が廃業手続きを行う際の実際の流れを確認しておきましょう。

【法人が廃業手続きを行う際の実際の流れ】
① 株主総会の特別決議による解散決議
② 清算人と代表清算人の選任
③ 清算人就任登記と解散登記
④ 閉解散の通知と公告
⑤ 会社財産の現況調査
⑥ 会社清算の完了と資産の処分
⑦ 債権者保護手続き
⑧ 決算報告承認総会の招集と開催
⑨ 清算結了登記
⑩ 清算結了届の提出

廃業の手続きには多くの項目があり複雑な作業もあるので、当記事で詳しく確認しておきましょう。

①株主総会の特別決議による解散決議

会社が解散するためには、会社の株主から廃業の承認を得るため、株主総会を開催する必要があります。

株主総会では、会社の解散を決定する特別決議が行われます。

特別決議とは、株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる賛成によって承認される決議のことです。

また、株主総会を開催せずに、議決権を行使できる株主全員が書面または電磁的記録によって提案された内容に同意の意思表示をした場合にも解散決議が承認されます。この決議方法は、書面決議と呼ばれています。実際には、議決権を有する株主全員が、決議内容が記載された書面に署名をすることで決議が成立します。

②清算人と代表清算人の選任

特別決議の株主総会時には、清算人と代表清算人の選任も行います。清算人は、廃業する会社の清算業務を行う役割を担っています。代表清算人は清算人が複数の場合に設置される役割で、一般的には経営者が務めます。

③清算人就任登記と解散登記

株主総会で特別決議と清算人の選任を完了させたのち、清算人就任登記と解散登記を法務局に申請する必要があります。清算人就任登記と解散登記は、法人の解散から2週間以内に行う必要があります。

また、清算人が1人の場合と複数人の場合とで記入が異なる部分があります。初めて記入する人や記入に慣れていない人は、法務局から出されている清算人就任登記と解散登記の記載例(商業・法人登記の申請書様式)を参考に申請書を記入しましょう。記載例と各申請書様式は法人の種類ごとに掲載されています。

解散登記を完了させた法人は、通常の営業ができない「清算会社」になります。清算会社は、清算の目的の範囲内で存続し、手続きを行っていきます。

④閉解散の通知と公告

会社を解散させるためには、国税と地方税に関する「異動届出書」と呼ばれる書類を税務署、都道府県税事務所、市町村役場に提出する必要があります。

また、「履歴事項全部証明書」の添付が必要になるので、異動届出書を提出する際は忘れないように注意しましょう。「履歴事項全部証明書」は法務局から請求できるので、登記事項証明書(会社・法人)を取得したい方を参考に交付請求しましょう。

異動届出書の提出期限は設けられていませんが、速やかな提出を心掛けましょう。詳しくは東京都主税局の異動届出書の記載要領を参考にしてください。

⑤会社財産の現況調査

会社を廃業する際には、解散時と清算時に決算書類を準備する必要があります。

解散時には財産目録とそれに基づいた貸借対照表を用意する必要があり、株主総会での承認を得なければなりません。株主に総会の開催通知と招集を行い、解散時の財産状態の報告を行いましょう。

国税庁の「財産目録」の書き方を参考に、財産目録を作成します。財産目録を完成させたのち、それに基づいて貸借対照表を準備しましょう。

⑥会社清算の完了と資産の処分

解散が予定されている法人はそれ以降事業活動を行わないため、清算手続きを行う必要があります。清算手続きとは、現時点で会社が継続している契約や会社財産の整理を指します。

【会社の清算手続き】
・資産の処分、現金化
・債権の回収
・契約の解除
・未払い税の納付
・債務の返済

会社は、現行の取引先との契約や従業員との労働契約の解消や、資産を現金化し債務を返済する手続きを行わなければいけません。

会社が在庫を保有している場合は、その在庫をすべて処分する必要がありますが、処分の方法として廃棄と売却の選択肢があります。在庫を廃棄する場合は費用がかかり、売却する場合は通常価格を大幅に下回る価格になる可能性があるため、在庫処分の必要がある人は留意しておきましょう。

資産の処分や債権の回収によって得た資産を残余財産と言い、これを利用して未払いの税の納付や債務の返済を行います。納付と返済を終えてなお余っている残余財産は株主の配当に充てられます。株主の持ち株数に応じて平等に分配する必要があります。

株主への配当について詳しく知りたい人は、国税庁の「第5章 差押財産の換価及び配当」を参考にしてください。

⑦債権者保護手続き

廃業する法人は、債権者の利益を保護するために債権者保護手続きを行う必要があります。債権者保護手続きは、官報への解散公告と債権者への催告をもって成立します。

官報は内閣府が発行し国立印刷局が運営している公的な情報伝達手段です。廃業する法人は、官報に廃業の旨を公告する必要があります。

官報に掲載後、債権者には2か月以上の債権回収期間が与えられ、この期間に債権の回収を申し出ることができます。官報への解散公告の掲載方法を知りたい人は、国立印刷局の「官報のご案内」を参考にしてください。

催告とは、官報への公告と別で、会社が把握している債権者に個別に廃業の旨を通知することを指します。この通知を受けた債権者は、解散公告同様に債権の回収を申し出ることが可能です。

法人は、官報への解散公告の掲載期間が経過したのち、廃業の手続きを進めることができるため、速やかに解散公告の申し込みを行いましょう。

⑧決算報告承認総会の招集と開催

法人の廃業手続きでは、解散時と決算時に決算報告書を作成する必要があります。作成したのち総会の開催通知を行い、株主を招集、総会を開催し決算の承認を受けることで清算業務の完了となります。

⑨清算結了登記

清算を結了させた後は、清算結了登記を記入し法務局に提出します。清算結了登記も「商業・法人登記の申請書様式」に記載例が掲載されているので、記入方法がわからない人は参考にしてください。清算結了登記の完了により、清算が終了し清算会社が消滅します。

⑩清算結了届の提出

清算結了登記が完了したら、最後に清算結了届を税務署、都道府県税事務所、市町村役場に提出します。その際は国税庁が出している「異動届出書」を記入してください。「閉鎖事項全部証明書」の添付も必要になるので、法務局の「登記事項証明書(会社・法人)を取得したい方」から取得してください。この作業を終えれば廃業の手続きが完了します。

確定申告も行う必要がある

法人を廃業する場合には、廃業の手続きのほかに、税務上の手続きとして解散確定申告や清算確定申告も行う必要があります。場合によっては清算中に確定申告を行う必要もあるため、廃業を予定している人はどのような確定申告が必要になるかをあらかじめ管轄の税務署に確認しておきましょう。

解散確定申告は、事業年度の開始日から解散日までの期間の確定申告です。解散日とは、株主総会で解散決議が行われた日を指します。解散確定申告は、この日の翌日から2か月以内に行う必要があります。

清算確定申告は、会社の清算手続きで残余財産を確定した日から1か月以内に行わなければなりません。清算確定申告をする人は、国税庁の「申告と納税」を参考にしてください。

なお、解散確定申告や清算確定申告は全ての法人に課される手続きです。一方で、清算中の確定申告は、清算手続きが1年で完了しなかった場合に作成が求められます。1年以内に残余財産を確定させることができれば作成する必要はありません。

清算手続きが1年で終了しなかった場合は、清算中の事業年度(解散決議日の翌日から1年間)が終了してから2か月以内に清算中の確定申告を行う必要があります。

法人の廃業には約8万円の費用がかかる

法人の廃業手続きにかかる費用は約8万円です。廃業手続きを予定している人は、8万円程度かかると覚えておきましょう。

【廃業手続きにかかる費用項目】

手続き番号 項目 費用
清算人就任登記 9,000円
解散登記 30,000円
清算登記 2,000円
官報への掲載費用 40,000円程度

官報への掲載費用は法人種別や掲載行数によって変わるので、正確な費用を確認したい人は「官報公告料金表(掲載にかかる費用総額)」を参考にしてください。

まとめ

法人が廃業するためには多くの手続きを要し、提出期限が設けられている業務もあります。期限内に手続きを済ませられるように余裕をもって進めるようにしましょう。

各法人で提出書類や必要な作業が異なる箇所があるので、自分にはどの手続きが必要なのかを一度整理してから手続きを始めるようにしてください。