ノウハウ 2024/5/23

株式交換とは?意味や類語との違い、メリットとデメリットを解説

事業を再構築する際、他の会社を買収して完全子会社化する、あるいは他の会社の完全子会社になるように「株式交換」という選択肢が出てくることがあるでしょう。

本記事では、株式交換の意味や、類語の「株式移転」・「株式交付」や「TOB(株式公開買い付け)との違い、株式交換のメリット・デメリットについても解説します。

株式交換の意味と必要な手続き

株式交換(かぶしきこうかん)は、親会社となる企業が「完全子会社となる企業の株式を全部受け取る」ことにより完全子会社化する、企業の合併・買収の手法です。

英語で株式交換は “Stock Exchange”と呼ばれます。

株式交換の定義は、次のとおり、会社法で定められています。

第二条(定義)
三十一 株式交換 株式会社がその発行済株式(株式会社が発行している株式をいう。以下同じ。)の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることをいう。

引用:会社法|e-Gov

株式交換の手続きについても、会社法で定められています。

参照:会社法 第四章 株式交換及び株式移転 第一節 株式交換(第七百六十七条〜第七百七十一条)|e-Gov

株式交換は会社法で「株式の譲渡等」に含まれ、法令に従った手続きが必要です。

  1. 株式交換の承認請求
  2. 株主総会の特別決議と承認
  3. 株式交換決定の通知
  4. 株式交換契約の締結
  5. 決済手続き
  6. 株式発行会社へ株主名簿の書き換え請求

参照:会社法 第三節 株式の譲渡等 第二款 株式の譲渡に係る承認手続|e-Gov

株式交換・株式移転・株式交付との違い

「株式交換」・「株式移転」・「株式交付」は会社法で定義されていますが、違いをまとめると下の表のとおりです。

【株式交換・株式移転・株式交付との違い】

株式交換 株式移転 株式交付
概要 完全子会社となる企業の発行済みの株式をすべて、親会社に渡す。 会社が発行済みの株式をすべて、新会社に渡す。 子会社化の際に支払う対価として、親会社が自社の株式を渡す。
対象 1対1の会社(厳密には双方の会社の株主)間 1または複数の会社と新会社との間 1対1の会社間
株式 譲渡会社(完全子会社)が、譲受会社(親会社、その株主)に株式をすべて渡す。 譲渡会社が譲受会社に株式をすべて渡す。 譲渡会社の株式を譲り受け、対価として親会社(譲受会社)の株式の一部を渡す。
備考 譲渡会社が完全子会社となり、譲受会社が完全親会社となる。

株式交換の対価は、完全親会社の発行する社債や新株予約権、現金など。

株式の移転先は新会社のみに限定される。 譲渡会社は子会社となるが、「完全子会社」にはならない。

第二条(定義)

三十一 株式交換 株式会社がその発行済株式(株式会社が発行している株式をいう。以下同じ。)の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることをいう。

三十二 株式移転 一又は二以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させることをいう。

三十二の二 株式交付 株式会社が他の株式会社をその子会社(法務省令で定めるものに限る。第七百七十四条の三第二項において同じ。)とするために当該他の株式会社の株式を譲り受け、当該株式の譲渡人に対して当該株式の対価として当該株式会社の株式を交付することをいう。

引用:会社法|e-Gov

株式交換とTOB(株式公開買い付け)の違い

TOB(株式公開買い付け)は、英語の「Take Over Bid」の略称で、公開市場において合理的に算定した価格で株式を短期間で大量取得できる、対象の企業の経営権を取得できる手法です。

株式交換とTOBの違いは「100%の株式を集められるか否か」です。

【株式交換とTOB(株式公開買い付け)の違い】

株式交換 TOB(株式公開買い付け)
株主総会の特別決議で承認を得られれば、すべての株主から株式を買い取れる。

対象の企業の完全子会社化のために株式を100%渡せるため、わざわざ公開市場でやりとりする必要がない。

公開市場で株主から合理的な価格で株式を買い取って、経営権を取得するのに向いている。

対象の会社の取締役会の同意なしに仕掛ける場合は「敵対的TOB」と呼ばれる。

集められる株式の数に制限があり、すべての株主から株式を100%集めることはできない。

経営権について詳しく知りたい方は「経営権とは?譲渡や移転、議決権・支配権との違いを解説」をご覧ください。

参考:完全子会社化と子会社化の違い</3>

子会社化とは、会社法で定義される子会社の状態にすること、つまり、自社の傘下に組み入れて子会社とした企業の経営権を持つことを意味します。

第二条(定義)三 子会社 会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。

引用:会社法|e-Gov

一般的に、議決権を行使できる過半数の株式を譲渡すると、譲受会社は譲渡会社を「子会社化」できます。

株式を100%取得して行う子会社化を「完全子会社化」と呼びます。

【完全子会社化と子会社化の違いのポイント】

完全子会社化 子会社化
親会社が100%株式を取得して完全に議決権をもつ「完全子会社」である。 株式の過半数を持つ「連結子会社」または、議決権割合の過半数に満たないが、親会社の影響を受ける「非連結子会社」である。

株式交換での子会社化と関連して、吸収合併や新設合併との違いについて詳しく知りたい方は「吸収合併とは?意味や類語との違いやメリットを解説」をご覧ください。

株式交換のメリットとデメリット

【株式交換のメリットとデメリット】

株式交換するメリット 株式交換するデメリット
  • 買収する側の企業(親会社)にとって、資金調達をせずに企業買収できる
  • 株主にとっては、買収後の企業価値向上が見込める可能性がある
  • ·完全子会社になる企業は親会社と別法人で存続するため、経営統合を緩やかに行える(従業員にとっては、雇用や待遇が維持される可能性が高い)
  • 企業価値向上が見込めない買収だと判断する株主が多いと、特別決議で承認されず、株式交換が成立しない
  • 買収によって企業価値が低下した場合、株主が株価下落の損失を被る可能性が高い
  •  買収対象の企業の株主が買収する側の企業の株主となるため、買収する側の株主構成が変化する