ノウハウ 2022/11/30

個人事業主の廃業手続きとは?法人の手続きとの違いも解説

個人で事業を行っている人のなかには、廃業を検討している人もいるでしょう。個人事業主が廃業するためには、書類提出による手続きや会計の整理などを行う必要があります。

当記事では、個人事業主が廃業するために必要な手続きを説明します。また、個人事業主から法人成りする場合の手続き方法についても解説しているので、廃業予定の人や法人成りを検討している人は参考にしてみてください。

個人事業主の廃業とは

個人事業主の廃業とは、個人事業主が自主的に事業を終了させることを意味します。

中小企業庁が2013年に行った「中小企業者・小規模企業者の廃業に関するアンケート調査」の「第3部 中小企業・小規模事業者が担う我が国の未来」によると、廃業した組織の形態の約9割が個人事業主であることが分かっています。また、廃業者の約63%が60代以上の高齢者の個人事業主であることも明らかとなっています。

個人事業主は高齢になり事業を続けられなくなった場合、後継ぎがいなければ廃業せざるを得ません。廃業を決断した場合には、個人事業主は廃業のための手続きを行う必要があります。

個人事業主の廃業手続きの流れ

廃業を検討している個人事業主の人は、廃業手続きの流れを確認しておきましょう。

【個人事業主が廃業手続きを行う際の実際の流れ】

  1. 事業終了日を決定する
  2. 関係書類を提出する
  3. 在庫と備品を処理する
  4. 事業を完了させる
  5. 資産と負債を整理する

法人が廃業をおこなう際の手続きとは異なり、株主総会での解散決議や登記の申請、解散公告の掲載は必要ありません。したがって、個人事業主の廃業手続きは法人よりも工数を少なく終えることができます。各工程を確認していきましょう。

①事業終了日を決定する

個人事業主は、法人とは異なり解散や清算という段階的な廃業手続きは行わないため、廃業すると決断した日が事業終了日になります。

突然廃業してしまうと、これまでの取引先への影響や今後提出する関係書類の準備不足などのトラブルが発生する可能性があるので、日程に余裕をもって事業終了日を決定しましょう。

②関係書類を提出する

廃業手続きにおいて個人事業主が提出する必要のある書類は5つあります。書類によって提出期限や提出対象者の条件が異なるので、どの書類を提出する必要があるかよく確認しておきましょう。

【個人事業主の廃業手続きで提出が必要な書類】

書類名 提出先 提出期限 提出対象者 国税庁のフォーマット
個人事業の開業・廃業等届出書 税務署、都道府県税事務所 廃業日から1か月以内 個人事業主全員 個人事業の開業・廃業等届出書
所得税の青色申告の取りやめ届出書 税務署 青色申告を取りやめる年の翌年3月15日(廃業届と同時が望ましい) 青色申告を行っている個人事業主 所得税の青色申告の取りやめ届出書
事業廃止届出書 税務署 廃業後速やかに(廃業届と同時が望ましい) 消費税の課税事業者 事業廃止届出書
所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書 税務署 第1期及び第2期の予定納税を減額申請する場合 7月1日~7月15日、第2期の予定納税のみを減額申請する場合 11月1日~11月15日 予定納税をしている個人事業主 令和4年分所得税及び復興特別所得税の予定納税額の7月(11月)減額申請書

※フォーマットは毎年更新されるので、その年の申請書に記入すること

給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書 税務署 廃業日から1か月以内 従業員を雇い、給与を支払っている個人事業主 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

事業廃止届出書や所得税の青色申告の取りやめ届出書は提出期限に余裕があります。しかし、提出先は他の書類と同じ税務署なので、廃業届出書と同時に提出することで、提出を忘れないように心がけましょう。

③在庫と備品を処理する

法人の廃業手続きと同じく、個人事業主が廃業する場合も在庫と備品の処理を行う必要があります。在庫を廃棄する場合には廃棄費用がかかるので、処分する場合は出費が発生します。

余っている在庫をすべて売却すれば廃棄費用はかかりませんが、通常価格を下回る価格で販売する可能性があるので留意しておきましょう。

備品の廃棄には費用がかかりますが、買い取り業者に買い取ってもらえることもあるので、廃棄費用による損失を避けたい人は買い取り業者に相談をしてみましょう。

④事業を完了させる

個人事業主が廃業する際、取引先との契約解除や、従業員を雇っている場合は従業員との労働契約の解除を行う必要があります。突然の報告は混乱やトラブルを引き起こす可能性があるので、事前の報告を忘れないようにしましょう。

また、個人事業主によっては従業員に退職金を支給する場合もあるので、従業員を雇用している人は退職金としてどのくらいのお金が必要かをあらかじめ把握しておきましょう。

⑤資産と負債を整理する

廃業を決定した個人事業主は、資産と負債を整理する必要があります。資産や負債は事業内容によって異なるため、所持している資産と負債を事前に一覧にしておきましょう。

【資産と負債の具体例】

資産の具体例 ・売掛金

・社用車、事業用機器などの備品

・商品の在庫

負債の具体例 ・買掛金

・未払いの税金

・借入金

所有している資産はすべて整理し、未払いの税や債務が残っている場合はすべて納付、返済します。所有する資産だけで債務を支払いきれない場合は、廃業後も個人事業主が借金を引き継ぐことになります。

債務の返済がある場合には、担当の金融機関や利用した信用保証協会に相談し、分割返済を交渉するのも選択肢のひとつです。廃業後も借入金が残る可能性がある人は、早めに相談しておくのがよいでしょう。

個人事業主の廃業手続きには費用がかからない

個人事業主が廃業する際には費用がかかりません。個人事業主は書類の提出のみで手続きが完了するからです。また、法人の廃業手続きには必要な登記や解散公告を行わないため、登記費用や官報への掲載費用がかかりません。

ただし、在庫や備品を処分する場合や従業員に退職金を支払う場合にはそのための費用がかかってくるので、あらかじめ必要となる費用を見積もっておきましょう。

個人事業主から法人成りする場合は手続きが増える

廃業手続きを行っている個人事業主の中には、法人成りを検討している方もいるでしょう。「法人成り」とは、今まで個人行ってきた事業を廃業し、法人として事業を始めることを意味します。

個人事業主から法人成りするためには、「個人事業の廃業手続き」と「法人の開業手続き」の2つの手続きを行う必要があり、手続きのための費用や提出書類が増えることになります。そのため、法人成りを検討している個人事業主の人は手続きの流れを確認しておきましょう。

まとめ

個人事業主は廃業手続きの際に書類を提出する必要があります。どの書類を提出する必要があるか、該当する書類を確認してから作業を進めましょう。

個人事業主が廃業する場合は、手続きをすべて一人で行う必要があるので、廃業する前に提出が必要な書類の確認や必要な費用を事前確認して、スムーズな手続きを行えるように心がけましょう。