ノウハウ 2022/11/30
廃業届とは?書き方と提出のタイミングを解説
廃業を考えている人のなかには、「廃業には廃業届の提出が必要って聞いたけどどうやって書けばいいの?」「そもそも廃業届って提出しなければならないの?」といった疑問を抱いている人もいますよね。
当記事では廃業届の書き方について詳しく解説します。廃業届を提出しなければならない理由や提出しなかった場合どのようなことが起きるかについても説明するので参考にしてみてください。
CONTENTS
廃業届は事業をやめる際に提出する書類
廃業届は不動産所得や事業所得、山林所得を得ている個人事業主が事業を廃止する際に、税務署に提出しなければならない書類です。廃業届の正式名称は「個人事業の開業または廃業等届出書」です。
廃業届の提出方法や提出期限、提出先は国税庁により指定されているため、これから廃業の手続きをする人は事前に確認しておく必要があります。
また、税務署への提出に加えて、都道府県税事務所への廃業届も必要です。廃業届の提出期限や様式は各都道府県によって異なるため、事前に各都道府県税事務所の公式サイトを確認するようにしましょう。
【廃業届の提出方法と提出期限および提出先】
提出方法 | 廃業届出書を作成のうえ、持参または送付により提出 |
---|---|
提出期限 | 事業を廃業した日から1か月以内
なお、提出期限が土日曜日または祝日等に 当たる場合は、これらの日の翌日が期限 |
提出先 | 納税地を所轄する税務署の税務署長に提出 |
参照:国税庁|[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続
廃業届を提出する場合は書類に不備がないか、提出方法や期限、提出先に間違いがないのかをよく確認したうえで提出するようにしましょう。
もし分からないことがあり、誰かに相談したい場合は最寄りの税務署(所得税担当)で相談可能です。ただし、閉庁日(土日曜日または祝日等)は対応していないことを頭に入れておきましょう。
廃業届の書き方
廃業届のフォーマットは国税庁の公式サイトからダウンロードできます。開業時と廃業時の届出を同一の書類で対応しているため、書類名は「個人事業の開業・廃業等届出書」と名付けられています。
廃業時に届出を提出する際は、8つの記載項目があります。
【廃業届の記載項目】
- 税務署名と提出年月日
- 職業
- 屋号
- 届出の区分
- 所得の種類
- 廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合
- 開業または廃業に伴う届出書の提出の有無
- 事業の概要
- 給与等の支払いの状況
※国税庁「個人事業の開業・廃業等届出書(提出用・控用)」を株式会社ソラボが加工
廃業届を書く際にどこに注意し、どのように書けばいいのかを項目ごとに説明していくので参考にしてみてください。記載項目に不明点がある場合は、管轄の税務署に問い合わせましょう。
①税務署名と提出年月日
個人事業主として確定申告を行っていた事業の納税地を管轄する税務署と廃業届の提出年月日を記入しましょう。所轄する税務署が分からない場合は開業届の控えや毎年送られてくる確定申告書の封筒から確認できます。
②職業
個人事業で行っていた職業を具体的(例:ITコンサルタント)に記入してください。職業をどのように書けばいいか分からないという場合は総務省の公式サイトにある日本標準産業分類を参考に書くとよいでしょう。
③屋号
個人事業で屋号を使用している場合はその屋号を記入してください。屋号とは個人事業者の方が使用する商業上の名のことで、商店名等のことを指します。屋号がない場合は空欄で提出しても問題ありません。
④届出の区分
今回は廃業する場合なので「廃業」に○をつけてください。その隣の「事由」の欄には、廃業するに至った事由を記入してください。たとえば、「法人成りのため個人事業を廃業」や「高齢になり仕事ができなくなったため」のように、廃業するに至った実際の理由を記入しましょう。
⑤所得の種類
廃業する事業の所得に該当するものに○をつけてください。隣の欄には、事業の全部を廃業する場合には「全部」という欄に、事業の一部を廃業する場合は一部の欄に○をつけてください。一部に○をつけた場合は、廃止する事業をカッコ内に記入してください。
⑥廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合
個人事業主から法人成りするために廃業する場合は、この欄に設立法人名、代表者名、法人納税地、設立登記日を記入しましょう。それ以外の理由で廃業する場合は空欄のままで大丈夫です。
⑦開業または廃業に伴う届出書の提出の有無
「開業または廃業に伴う届出書の提出の有無」の欄は、廃業届を提出する際に、ほかの書類の提出があるかどうかを確認する項目です。
個人事業で青色申告を行っていた場合や消費税を支払っていた課税事業者は、それぞれ「青色申告の取りやめ届出書」と「事業廃止届出書」を提出する必要があるため、「有」に○をつけます。
また、青色申告ではなく白色申告を行っていた場合や消費税の支払いが不要であった場合はこれらの書面の提出は不要なので、「無」に○をつけましょう。
⑧事業の概要
個人事業主として行っていた事業の内容を具体的に記入しましょう。
たとえば、ITコンサルタントの場合は「IT関連分野全般における業務改善の提案、ITシステム導入支援、Webサイト運営」のように記入します。
開業の場合は詳しい記入が求められますが、廃業の場合は開業ほど詳細な内容が求められないので、今まで行っていた事業を思い出しながら書きましょう。迷った場合は開業届と同様でも問題ないため、過去に提出した開業届の控えを参考にしてみましょう。
⑨給与等の支払いの状況
個人事業主として親族を従業員として雇っていた場合は、「専従者」の欄に雇っていた親族の人数を記入しましょう。親族以外の従業員を雇っていた場合は使用者の欄に人数を記入します。「給与の定め方」の欄には日給や月給等の区分を具体的に記載します。
また、「税額の有無」の欄には各人ごとの給与額及び扶養親族等の状況等からみて納税すべき税額があるかどうかを判断し、その区分の全員について納付すべき税額がないと認められる場合は無を、その他の場合は有を○つけてください。
廃業届以外にも必要な書類もある
法人成りのために個人事業を廃業する場合は、廃業届以外にも書類の提出を求められるケースがあります。
【法人成りする場合の必要書類と概要】
必要な書類 | 概要 |
---|---|
青色申告の取りやめ届出書 | 青色申告制度による確定申告を行っていた場合は原則税務署に提出が必要。期限は翌年3月15日まで |
給与支払事務所等の廃止届出書 | 従業員や専属従事者等に給与を支払っている場合は、廃業した日から1カ月以内に、所轄税務署に提出する |
事業廃止届出書 | 消費税の納税義務者は、廃業後速やかに所轄税務署に提出する |
所得税及び復興特別所得税の 予定納税額の減額申請書 |
予定納税を行っている場合、第1期分および第2期分の減額申請については、その年の7月15日までに、第2期分のみの減額申請及び特別農業所得者の減額申請については、その年の11月1日から11月15日までに所轄税務署に提出する |
法人成りで廃業する人は必要な書類を確認し、提出する不備がないように注意しましょう。
廃業届はオンラインでも提出できる
税務署まで行って廃業届を出す時間がない人は、廃業届をオンラインで提出することも検討してみましょう。提出にはe-Taxを利用するため、オンラインによる提出方法の詳細はe-Taxの公式サイトで確認しておきましょう。
廃業届の提出に費用はかからない
廃業届の提出時に手数料は発生しないため、廃業届の提出にかかる費用はゼロです。廃業届を提出する際は記入済みの書類を窓口に提出し、書類が受領されれば手続きは完了します。
ただし、廃業自体には解散の登記や清算人の登記、決算結了の登記など各種登記費用や証明書の取得費用、士業への報酬費用、在庫や設備などの処分費用、物件の原状復帰といったさまざまな費用がかかります。そのため、廃業を検討している人は廃業を完了するためにかかる費用をあらかじめ調べておきましょう。
廃業届はできる限り早めに提出する
廃業届はできる限りはできる限り早く提出しましょう。廃業届を出さなければ税務署では個人事業が継続されている扱いになり、確定申告の時期になると申告関連の書類が送付されます。これを無視し続けると無申告加算税や延滞税が課されてしまいます。
万が一、廃業届の提出を忘れてしまった場合は、確定申告の提出期限前に自主的に廃業届を所轄税務署と都道府県税事務所に提出すれば税額が加算されることはありません。
事業の廃業を検討している人は、廃業届の提出を忘れないように前もって提出のスケジュールを組んでおきましょう。
開業届を出さなかった人も廃業届は出しておく
個人事業主として独立した際に開業届を提出しなかった人も廃業届は出すようにしましょう。開業届を出していない場合でも、確定申告が開業届の代わりとなっているため、廃業届を提出しなければ課税対象となってしまうためです。
意図していない税金の支払いが生じるのを避けるためにも、廃業届は必ず出すようにしましょう。
廃業届を出しても開業届を出せば再び開業できる
廃業届を出しても開業届を出せば再び開業することができます。
すでに廃業届と青色申告の取りやめ届出書を提出している場合は、再度開業届の提出と青色申告を申請すれば開業できます。
なお、廃業時に「青色申告の取りやめ届出書」を提出していない場合は青色申告の承認が引き続き有効になる場合もあります。廃業時に青色申告の取りやめ届出書を提出したかどうか覚えていない場合は、最寄りの税務署に問い合わせてみましょう。
まとめ
廃業届は不動産所得や事業所得、山林所得を得ている個人事業主が事業を廃止する際に、税務署に提出しなければならない書類のことです。廃業届を提出する人は提出方法や期限、提出先が指定されていることに注意しましょう。
廃業届の書き方については個人事業主ごとに記載内容が異なるため、自分の書くべき項目を確認し、分からないことがある場合は最寄りの税務署に確認するようにしましょう。
廃業届を出さないと無申告加算税や延滞税など本来払わなくていい税金を払わなければいけなくなる可能性があります。開業届を出さなかったから廃業届も出さなくていいとは思わず、廃業届は早めに提出しましょう。
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