コラム 2022/11/9

廃業とは?倒産との意味と対応の違いを解説

事業を経営している人のなかには、廃業と倒産のそれぞれの意味の違いが気になっている人もいますよね。実は、廃業と倒産の意味は異なる上、廃業か倒産かによってその後の対応が違うため、事業を経営している人は予備知識としておさえておく必要があります。

当記事では廃業と倒産の違いを解説します。その後の対応方法や廃業と倒産以外の方法についても説明するので、ぜひ参考にしてみてください。

廃業は事業をやめること

廃業とは経営者の事情や判断によって事業を終えることです。事業を続けようと思えば続けられますが、何らかの事情によって事業をやめる判断をした場合は「廃業」となります。

たとえば、長年飲食店を経営してきた人であれば、高齢になり気力と体力が衰えてきたことをきっかけに廃業する場合があります。

このほかにも、「事業に将来性がない」「怪我や病気で事業を続けられない状況になった」などの事情から廃業になる可能性があります。

倒産は事業をやめざるを得ないこと

倒産とは事業を続ける意思があるにもかかわらず、資金繰りがうまくいかずに事業を終えざるを得ない状況になってしまうことです。

たとえば、製品やサービスが売れなくなったことによる売上高の減少で会社の資産が減少していく場合が考えられます。

また、長期的に業績が悪化しているにもかかわらず先代や過去の資産があるからと安心しきってしまい、資産が足りなくなった時にはもう手遅れになっており倒産する場合もあります。

倒産は廃業とは異なり、資金繰りが困難になり事業を終えざるを得ない状況になることを指しているので、言葉の使い分けに迷っている人は意味の違いをおさえておきましょう。

廃業と倒産で今後の対応も異なる

廃業と倒産ではその後どのような対応をとるのかも異なってきます。廃業の場合は会社の解散と清算の手続きを済ませれば対応が完了する一方、倒産の場合は債務の処理に対応する必要があるからです。

廃業するか倒産するかによって経営者がとるべき今後の対応も異なるため、それぞれの対応方法を押さえておきましょう。

廃業の場合の対応

廃業するためには手続きを踏む必要があります。手続きをおこなわなかった場合、税務署からまだ事業を継続している状態だとみなされてしまい、納める必要のない税金の支払いを求められる可能性があります。そうならないためにも必ず手続きを済ませましょう。

【廃業するために必要な手続き】

  • 株主総会の特別決議(3分の2以上の賛成)による解散決議
  • 清算人・代表決算人の選出
  • 決算人就任登記・解散登記
  • 閉解散の通知・公告
  • 会社財産の現状調査
  • 現務の結了・財産の換価・分配・処分
  • 債務者保護手続き(解散公告など)
  • 決算報告承認総会の招集・開催
  • 決算結了登記

そのほか、税務上の手続きとして解散確定申告、決算確定申告なども必要となってきます。

廃業の手続きを問題なく終わらせたい場合は、廃業を決意した早めのタイミングで廃業を専門としているコンサルタントや廃業を支援している弁護士に相談してみるのもよいでしょう。

倒産の場合の対応

倒産の手続きには会社が保有しているすべての財産を清算して、会社を債務とともに消滅させる「清算型」と会社を存続させて再建を図る「再建型」の2種類に分類できます。

清算型と債権型とでは必要な手続きが異なるので、倒産の手続きを知りたい人はそれぞれの手続きをみていきましょう。

清算型の手続き

清算型の手続きには法的整理と私的整理の2種類があります。法的整理は、債権者または債務者が裁判所に対して、一定の手続きを申請し、裁判所の関与および監督のもと、法律に則って債務者の再建、または清算手続きが進められるものです。

一方、私的整理は裁判所の関与および監督なしで債権者と債務者との協議により倒産手続きを図るものです。

【法的整理と私的整理の違い】

法的整理 私的整理
破産手続 特別清算手続
破産法に基づく破産手続き 会社法に基づく破産手続き 裁判所の関与なしで裁判外にて倒産処理を進めていく手続きのこと
個人・すべての法人が利用可能 清算中の株式会社のみ利用可能 債権者・債務者の話し合いの元手続きをしていくので強制力がない
手続開始原因は債務者が支払不能または債務超過である場合 手続開始原因は清算中の株式会社が「生産の遂行に著しい支障を期すべき事情がある場合」または「債務超過の疑いがある場合」 法的整理に比べ費用が安価で済み、秘密裏に行うことができるというメリットがある。
実際に手続きを遂行していくのは裁判所に選任された破産管財人で債務者と利害関係のない第三者の弁護士 裁判所によって選任されるのは同じだが、清算人がそのまま特別清算人に選任されるのが通常である 債務者の同意が必要というデメリットがある
債権者の意見は尊重されるが、基本的には裁判所および破産管財人が判断をする 債権者の同意がなければ手続きを進めることができないため破産手続き以上に債権者の意向が重要

清算型の手続きを検討している人は、公平性や強制力などメリットデメリットを理解し、自分にとって最適だと思う手続きを選びましょう。

再建型の手続き

再建型の倒産手続きとは債務者の借入金の返済期間を延長してもらったり、債務カットをしてもらったりしながら収益・財産を維持または向上させ、債務者の経済的な再建を図っていく手続きのことです。

また、再建型の倒産法・倒産手続きとしては、民事再生法に基づく民事再生手続、会社更生法に基づく会社更生手続、または、清算型でも出てきた私的整理手続があります。これらの特徴としては以下が挙げられます。

【民事再生手続、会社再生手続、私的整理手続の特徴】

民事再生手続 会社再生手続 私的整理手続
裁判所から選任された監督委員の指導監督のもと、債務者主導で再生計画の策定や弁済を行っていくもの 裁判所から選任された更生管財人が手続きを主導していくもの 裁判外において、債権者と交渉するなどして、負債や債務の整理を行うもの
すべての法人が利用することができる 更生会社の役員は基本的に交代が求められる 清算型として行われる場合もある
個人の場合は民事再生法において、民事再生の特則として個人再生の手続きが設けられる 個人が利用することはできず、法人についても株式会社のみ利用可能

再建型の倒産は、清算型の倒産に比べて柔軟な処理が可能ですが、一方で追加融資が受けられなくなる可能性があるというデメリットも存在します。これらを専門としている弁護士などに一度相談し、適切な手続きを確認しておきましょう。

廃業のつもりでいたら倒産してしまったというケースもある

廃業するつもりで検討していった結果、倒産に陥ってしまったというケースもあります。

たとえば、会社の現金や貯金、土地などの資産の評価額が想定していたより少なく、資産が不足し倒産したというケースや一斉に退職する社員の退職金が足りずに倒産になってしまったというケースが考えられます。

廃業を意識し始めた段階から一度これらを計算しておき、倒産にならないように注意しましょう。

廃業を考えているならM&Aという手もある

廃業しようと考えている方はM&Aという方法で事業を継承できるということはご存じでしょうか。年齢などの問題で経営者としては退き、事業をたたみたいが、社員のことや取引先のことを考えると申し訳ないと考えている方にぜひおすすめしたい方法がM&Aです。

M&Aを行うことで、事業の本当の魅力を知っている買い手に事業を継承し、社員の雇用や取引先に迷惑をかけないということが可能となります。

まとめ

続けようと思えば続けようと思えば続けられる方が「廃業」、続ける意思はあるが資金繰りがうまくいかず会社や事業を終えざるを得ないほうが「倒産」です。

廃業や倒産を考えている人は、自分がどちらに当てはまるのかを確認し、手続きや書類の提出など適切な対応ができるようにしておきましょう。

また、廃業と倒産のどちらを選ぶにしても、「M&Aを行うことで後継者がいない」「社員や取引先に迷惑をかけたくない」「資金繰りをどうにかしたい」といった様々な問題を解決できる可能性があるため、一度身近な支援機関や専門のコンサルティング会社に相談してみるのもよいでしょう。