ノウハウ 2024/5/23

株式譲渡にかかる税金と譲渡益の計算方法を解説

事業を再構築する際に、経営権を移転させる「株式譲渡」を行うと、原則、譲渡によって利益(譲渡益)に対して税金がかかります。

本記事では、株式譲渡にかかる税金の基本、上場・非上場、有償譲渡・無償譲渡などのケース別のポイント、株式譲渡益の計算方法についてご紹介します。

株式譲渡の税金

株式譲渡は「株式を売却し、譲渡益を得た株主」に対し、税金が課せられます。

株式を売却した株主が個人なら所得税と住民税、法人なら法人税などを納税します。

個人の場合、総所得で算出した所得税とは別に、譲渡益の総額に対して一律の税率を乗じて算出し、申告する必要があります(申告分離課税)。

法人の場合、法人税などでまとめて納税します。

【株式を譲渡した側に課せられる税金の種類】

株式譲渡した側の属性 税金の種類 備考
個人 所得税(15%)

住民税(5%)

・2037年まで、株式の取引に復興特別所得税も課せられる

・事業者でない個人から個人に無償で株式譲渡し、譲渡益がない場合、譲渡した側に税金はかからない。

・事業者の個人から個人への株式譲渡は「みなし譲渡」として消費税が課される。

・個人から法人へは「みなし譲渡」として課税される。

法人 法人税など(およそ30%〜35%) ・国税の法人税のほかに、地方税の法人事業税、法人住民税なども課せられる

・法人税などは法人の規模や年間所得、事業年度、所轄の都道府県などによって適用の税率が変動するため、税率の幅がある

参照:No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税) – 税率|国税庁
No.5759 法人税の税率|国税庁
法人住民税・法人事業税|総務省

なお、次の組み合わせの株式譲渡の場合、株式の「みなし譲渡」として、対価が無償譲渡(贈与)あるいは時価より低かったとしても「時価で株式譲渡した」とみなされ、課税対象になります。

  • 事業者を営む個人から個人への株式譲渡
  • 個人から法人への株式譲渡
  • 法人から個人(役員など)への株式譲渡

時価を下回る金額での譲渡でも「現物の寄付」と認定されるケースでは、譲渡した側の個人は寄附金控除、法人は条件によって一定の範囲内で損金に算入できる可能性があります。
参照:寄附金を支出したとき|国税庁

また、株式譲渡を受けた側にも税金がかかるケースとして、贈与にあたる「無償譲渡」があります。

無償譲渡を受ける側の個人は贈与税や相続税、法人は法人税などが課されます。

【株式の無償譲渡を受けた側に課せられる税金の種類】

株式譲渡を受けた側の株主の属性 無償譲渡(贈与) 備考
個人 ・贈与税(譲渡された株式の価値が110万円を超える場合)

・相続税(譲渡する側が亡くなった際の株式譲渡である場合)

相続税のケースで、相続した株式の配当金に所得税がかかることがあるが、相続の株式の無償譲渡そのものに所得税は課されない
法人 法人税など

参照:相続税・贈与税|国税庁

なお、株式譲渡にかかる税金は、優遇税制などを適用すると税率が下がったり、非課税になったりすることがあります。

【株式に関する主な制度例】

  • エンジェル税制(ベンチャー企業の株式を取得した個人株主に対する優遇税制)
  • ストックオプション税制(社員や役員が自社株を購入した場合の優遇税制)
  • NISA制度(毎年株式で得られる一定範囲内の利益が非課税になる優遇税制)
  • 特定口座制度(税制優遇はないが、特定の口座を使い、納税申告手続きを簡素化できる)

主な優遇税制以外にも、税金が変動する条件は多岐にわたるため、国税庁のサイトで確認するとよいでしょう。

参照:株式・配当・利子と税|国税庁
タックスアンサーコード一覧 – 株式投資等と税金|国税庁

株式譲渡益の計算方法

株式の譲渡益の計算方法は、次のとおりです。

株式の譲渡益 = 株式の売却金額 -(取得費+手数料など)

参照:No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税) – 上場株式等・一般株式等に係る譲渡所得等(譲渡益)の金額の計算方法|国税庁

なお、株式の上場・非上場により、税率や計算方法が変わることはありません。

株主の取得費は、基本、購入時の1株あたりの取得費を算出し、譲渡株式数を乗じて算出します。

( 購入単価 × 購入株式数 +購入手数料など+消費税)÷購入株式数 ×譲渡株式数

そもそも、株式譲渡とは?

「株式譲渡」は主に会社法にて定められており、有償または無償で、別の会社法人または個人に「株主が保有する株式を譲り渡すこと」全般を指す言葉です。
参照:会社法 第三節 株式の譲渡等 第一款 株式の譲渡(第百二十七条〜第百三十五条)|e-Gov

株式を有償で譲渡すれば「売却」、無償で譲渡すれば「贈与」と呼ばれる傾向があります。

株式譲渡の基本について詳しく知りたい方は「株式譲渡とは?意味と流れと制限と類語との違いを解説」をご覧ください。